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【"科学的人事実践"の事例】社員意識調査(第2段)


本記事では、社員意識調査の運用・実装方法について、
弊社がコンサルティング支援を実施した企業様の進め方を例にご紹介します。
※本記事で扱う社員意識調査は、半年に1回や年に1回ごとに全社員向けに実施する調査施策を想定しています

調査は大きく分けて3つのステップで進めます。
STEP1:仕様検討    (第1弾の記事でご紹介
STEP2:アンケート運用 (本記事でご紹介)
STEP3:分析検討    (本記事でご紹介)

ステップは3つに分かれておりますが、
本記事では「STEP2:アンケート運用」「STEP3:分析検討」についてご紹介いたします。

※第1弾の記事はこちらからご確認いただけます

STEP2:アンケート運用
アンケートの運用について検討するのは以下の4点です。
・回答方法(WEB・QRコード・紙)
・回答時期
・回答期間
・リマインドで進捗管理

▼回答方法
WEBでログインして回答できる環境がない場合にどうするかが検討ポイントです。
タレントパレットの場合は、ログインを前提として回答をするシステムのため、アカウントがない社員は回答・集計ができません。
アカウントがあっても、回答用の端末がない場合はQRコード等を発行し、職場の共有端末やプライベート端末(セキュリティ面で懸念があるため利用時は検討が必要)でログインして回答することになります。また、端末がない場合は、紙で調査票を展開・回収・転記する必要があります。
これらの環境に対応して、回答できない対象者を含めるかどうかを検討することになります。

▼回答時期
時期の観点として、繁忙期を避けるのが通例と思いますが、調査は秋で実施するケースが多いです。期初が4月から始まり、組織としての活動を一定程度行った後に社員意識調査で組織の状態を見ることが多いためです。
また、組織別に調査結果をフィードバックする場合は、組織の改善活動を検討するため、行動をする時期も見込んで9~11月ぐらいに実施する会社が多くなります。
実施時期が決まれば、先ほどの仕様検討についての時期も自然に決まるかと思いますので、アンケートの実施時期を決めるのが最初のタスクと言えるでしょう。

▼回答期間
回答期間は2週間~1か月程度が一般的ですが、推奨として延長期間も見込んで事前にスケジュールを組んでおくことが重要です。
回答率向上のために締め切りを複数回設けることで、回答者の回答意欲が高まることや、延長期間を見込まなかった場合のアンケートプロジェクトの遅延を防ぐことができます。

▼リマインドと進捗管理
リマインドと進捗管理は回答率向上に向けた取り組みとして実施します。
通常、統計調査ではサンプリング調査と全数調査のどちらかを選択しますが、人事系の施策の場合は調査対象者をランダム選出することが難しいため、全数調査が現実的であることが多いです。

全数調査を実施するためには、回答率向上のためのリマインドや進捗管理が重要となります。回答率向上の目標は会社のポリシー次第ですが、社員の総意としての全数調査を重視するため、回答率80%以上を目指す会社が事例として多いです。

なお、タレントパレットでは管理者や権限が付与された社員は未回答者をリアルタイムで抽出しリマインドメールを送付することや、アンケート開始日○日後、アンケート終了日○日前という形でリマインドメールの自動送信も可能です。



▼アンケートの設定
タレントパレットのアンケート設定はシンプルです。
下記ガイドを踏まえて設定いただければと思います。

【ガイド/概要/設定】アンケートの設定手順について知りたい

STEP3:分析検討
アンケート集計・分析時の観点についてご説明します。

分析の観点は様々ですが、集計の際の着眼点として3つの観点を意識していただけると良いでしょう。
・点数の高低の解釈
・目的変数への関係性
・コメントからの深掘り

▼点数の高低
前提として、良いか悪いかを判断するには何らかの基準との比較が必要です。
例えば、アンケートの選択肢を以下のように作成した場合は、
・5点:とてもそう思う
・4点:そう思う
・3点:どちらともいえない
・2点:そう思わない
・1点:とてもそう思わない

平均点が3点以上であればポジティブ、3点以下であればネガティブと解釈できます。3点は中立という基準があるため、3点未満は選択肢から課題と解釈するのが課題のこの判断方法です(絶対基準)。
また、他のベンチマークとの比較によりポジネガを解釈する方法もあり、全社と属性別の比較や、今年度と前年度の比較、全社と他社との比較が該当します(相対基準)。

絶対基準と相対基準の差が出やすいのは、設問内容です。
一般的に、人間関係やハラスメント、コンプライアンスなどの設問は点数が高く、給与や評価などの処遇に関わる設問は低く出がちです。
絶対基準では設問特性により上記の特徴が出てしまうため、設問の特性を除いて解釈するために相対基準としての差を見ることが重要です。
(絶対基準でもネガティブな結果は許容できない、●点以上は目指したいということであれば課題抽出の基準になりえます)

相対基準の差を見る際に次に課題になるのは、ベンチマークが妥当か、差はどれぐらいあれば意味があるのかです。

ベンチマークの妥当性は比較対象によります。
例えば、テレワークの満足度を聞く調査があった際に、業務上テレワークできる部署とそうでない部署を比較してもあまり意味がないことは理解できると思います。
そのため、前述の属性別の集計でどこと比較するかという仮説が重要になります。

差はどれぐらいあれば妥当かについては、経年比較の際に議論になりがちです。
ある設問で点数が○点下がったのは課題かどうかという文脈で語られがちですが、この問題は正確には検定をしなければ、たまたま下がったのか、統計的にはめったになく意味ある点数の下がり方なのかの解釈ができないということになります。

実務ではT検定というExcelでもできる検定を行います。このような検定を行い、差が有意な項目・属性を抽出するのも良いですが、その手間や前提知識が必要になることを考慮すると、経営層にもわかりやすく説明できるという観点で、比較対象間で差の大きい設問をランキングにするということはオススメの方法です。
下記の例では、男女の点数差の大きい設問の差を並べると、女性は男性に比べて、挑戦意欲があるか、組織と個人目標が連動しているか、自身をもって仕事を進めているか、期待役割を明確に伝えられているかといった、エンパワーに関する設問の傾向差が出てきます。


このようなランキングにより、比較対象間の設問の傾向差を見て課題を抽出するのがこの分析の方法です。

▼目的変数への関係性
目的変数を設定した場合に有効な方法です。
アンケートの設問設計によっては、設問ごとに重要度を回答させる方法もありますが、この場合、回答負荷が増えることに注意が必要です。

そのため、目的変数とその他の設問の関係性から重要度を探ります。2つの方法を紹介します。
・差の分析
・相関分析

差の分析は前述の方法で、例えば、目的変数であるエンゲージメントの高い群と低い群に分け、差が大きい設問を重要な設問とするアプローチです。この方法は、男性・女性などの2つに分けやすいデータであれば使いやすいですが、年齢や評価、アンケートの点数などの段階的なデータの場合は区分が設定しづらいという課題があります。この場合には相関分析を活用します。

相関分析はタレントパレットで可能で、上げるべき指標(目的変数)とその他の設問(説明変数)の相関係数と設問の平均点の2軸でプロットします。


ここではX軸に相関係数、Y軸に設問別の平均点をとっているため、目的変数の設問の点数を上げる観点で、以下のように解釈します。

・右上にある設問は目的変数との相関があり、平均点も高いため現状維持・強化すべき設問
・右下にある設問は目的変数との相関があり、平均点も低いため改善・施策検討すべき設問
・左側にある設問は目的変数との相関がないため、施策検討しなくてよい設問

※相関があっても影響がないケースもあるため、目的変数と右側で抽出された設問は散布図を作成し影響度を確認することを推奨します。

上記の例での課題抽出ですが、eNPSを目的変数にしているため、誇りややりがい実感の相関係数が高いのですが、この設問は施策検討に使用しづらいため、実際の検討の際には除外して考えます。一方、キャリアビジョンは施策検討もイメージしやすく、eNPS向上に向けてこのテーマを深掘りするというのが課題抽出のプロセスになります。

点数の高低の場合は着目すべき設問が多く、優先順位がつけづらい点がデメリットとしてありましたが、本分析では相関係数という施策優先順位付けの指標があるため、改善につなげやすいという点がメリットとしてあります。

▼コメントからの深掘り
コメントの深掘りについては、点数の高低や目的変数との関係性から抽出した定量的な課題を定性情報で補完することが目的です。
タレントパレットでは自由記述をテキストマイニングして課題抽出することが可能です。




例えば、「変革意欲を醸成したい」といった課題があれば、テキストマイニングの全体マップ(共起ネットワーク図)から「チャレンジ」という単語をピックアップします。ここではeNPSがポジティブな対象者が「チャレンジ」について語っているため、エンゲージメントが高い社員をよりチャレンジさせるためにどのようなことをしたいかを語っている文章になります。
内容を確認すると、新しい仕事やローテーション、新市場への挑戦という単語が抽出されるので、チャレンジ施策の具体化に活用していきます。

この時に注意点として、自由記述を聞く際にポジティブ・ネガティブの志向性を事前に定めることや、テーマを絞るというのは有効な方法です。上記例ではエンゲージメントがポジティブな対象者に絞って回答を抽出していますが、自由記述設問の段階で会社の良い点はなにかを複数のテーマから選択の上コメントさせると、ポジティブな回答かつ、テーマ別にテキストマイニングができるため、より具体的に要因の掘り下げをすることが可能です。


以上、2つの記事にわたって社員意識調査の運用・実装方法について説明してきました。

タレントパレットでは設問のテンプレートがあり、そのまま活用することも可能ですが、あくまでテンプレートのため、皆様の会社に合わせた内容になっていません。
上記の解説してきた観点を踏まえて自社に合わせた運用・実装方法を検討いただくことでより良い調査や、人事施策につなげることができるかと思います。

ぜひタレントパレットを有効活用して社員意識調査を実施いただければ幸いです。

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